Weekend Mathematics問題/問題38



38.魔法の切り株の問題

ひとりの農夫が、森の中で見知らぬ老人に会いました。 2人は話し合いました。 老人は注意深く農夫を見て言いました。
「この森には不思議な切り株があるのをわしは知っている。貧乏な人を助けるのじゃ。」
「どのようにして助けるのですか。病気を治療してくれるのですか。」
「治療はしないが、お金を2倍にしてくれるのじゃ。お金の入った財布を、その根もとにおいて百まで数える。 するとちゃんと、財布の中のお金が2倍になっとるのじゃ。」
「わたしも、やってみられるかい」と夢見るように農夫はいいました。
「もちろん、やれるとも。ただ、お金を払わにゃならんのじゃ。」
「誰に? いくら?」
「お前さんに切り株のある道を教える人にな、つまりわしにじゃよ。 いくら払うかということは、また別の話じゃ。」
2人は取引を始めました。 農夫の財布に中にお金が少ししかないことを知って、老人はお金が2倍になるたびに1200円ずつ受け取る ことに同意し、話は決まりました。
老人は森の奥へ農夫を連れて行きました。 2人は長い時間さまよい歩き、ついに、茂みの中にあるこけにおおわれた古いもみの木の切り株 を探し出しました。 農夫の手から財布を取ると、老人は木の切り株の根っこの間にそれを押し込みました。 2人は百まで数えました。 老人は、また、切り株の根もとを手探りでかきまわしたあげく、財布を引っぱり出して農夫に与えました。
農夫が財布をのぞいて見るとどうでしょう。お金が本当に2倍になっていました。 そのうちから約束の1200円勘定して老人に与え、また奇跡を行う切り株の下に財布を押し込むことを頼みました。 また百まで数え、切り株の茂みの中をかきまわし始めました。
するとまた奇跡が起こりました。 財布の中のお金がまた2倍になっていたのです。 老人はまた財布の中から約束の1200円受け取りました。 3度、2人は財布を切り株の下にかくしました。 お金は今度も2倍になりました。
しかし、農夫が老人に約束の礼金を払ったら、もはや1円のお金も残っていませんでした。 あわれな農夫は、この共同作業で自分のすべてのお金を失ってしまいました。 2倍にしようにも、もはや手元には何もなく、農夫はすっかり意気消沈して森からとぼとぼ 歩いて立ち去りました。
お金を2倍にする魔法の秘密はもちろん、あなたがたにはおわかりでしょう。 老人が財布を探しながら、茂みの中でぐずぐずしているのはわけのあることです。
しかし、このとは別として、あなたがたはつぎの質問に答えることができますか。

魔法の切り株で不幸な取引をする前に、農夫はいくらのお金を持っていたでしょうか。



問題の出典


数学のはなし

ペレリマン

東京図書







答えと解説












答えと解説

解答・その1

(ペンネ−ム:ゆうじ)

{(2x-1200)2-1200}2-1200=0
これをxについて解くと x=1050
だから1050円持っていた



解答・その2

(ペンネ−ム:SUDOU)

はじめにもっていたおかねをxとすると 8x−8400=0になればよいから x=1050
したがって農夫は始め1050円持っていた



解答・その3

(ペンネ−ム:HASEGAWA)

最後に老人にお金を渡して0円になるということは3回目に2倍にした時点の農夫の所持金は1200円。
2倍になる前が600円。
2回目に2倍にして1200円払って600円ということは2回目に2倍にした時点で1800円。
2倍にする前で900円。
同様に1回目に2倍にして1200円払って900円ということは1回目に2倍にした時点で2100円。
2倍にする前で1050円。よって最初の農夫の所持金は1050円。



解答・その4

(ペンネ−ム:かつ)

3回でなくなるということなので、簡単な方法で戻って見ることにしました。
最後に0円になるから・・・
切り株に入れる前は→600円あったはず。
その前は600円になるから・・・
切り株に入れる前は→1200円をひいて600円だから→1800円さらにその半分だから →900円
一番最初にもってたのは・・・
1200円ひいて900円だから2100円の半分で1050円!

答え1050円

これって絶対に1200円を超えることはないんですよね。 だって1200円持ってると絶対に0になることはないんだもんね。 結局何回やってみても1200円に限りなく近づくだけで超えることはないです。

なんかわかりにくくなってしまったので、数式にしてみます。
はじめの操作でできるのはz円とすると 2Z−1200=0だからZ=600
次の操作でできるのはY円とすると 2Y−1200=600よりY=900
最後に求めるお金をX円とすると 2X−1200=900よってX=1050 となります。



解答・その5

(ペンネ−ム:かに)

農夫が x 円持っていたとすると、 最初に2倍になったときは 2x-1200円、
次に2倍になったときは (2x-1200)・2-1200円、
3度目に2倍になったときは {(2x-1200)・2-1200}・2-1200円
をそれぞれの時点で所持しているが、最後は 0 円なので 最後の式=0より x=1050 円



解答・その6

(ペンネ−ム:夜ふかしのつらいおじさん)

答えは1050円です。答えは1050円です。
では、あわれな農夫といっしょに、だまされないよう落ち着いて考えてみましょ う。初めの農夫の持ち金をp円としましょう。

 切り株に置く前  取り出した後  お礼を払った後 
1回目p    2p   2p−1200
2回目2p−12004p−24004p−3600
3回目4p−36008p−72008p−8400

8p-8400=0なのですから初めの持ち金pは1050円です。
たとえお金が倍になるとしても持っているお金より多いお礼をするのではやがてお 金がなくなることに農夫は気付くべきでした。もしお礼を初めに払うのであれば農夫 も気づいたかもしれません。





解答・その7

(ペンネ−ム:青光)

若者がx円持っていたとすると、
1回目…2x−1200
2回目…2(2x−1200)−1200
3回目…2{2(2x−1200)−1200}−1200

3回目でお金が無くなってしまったので、
2{2(2x−1200)−1200} −1200= 0 を解くと、
x = 1050
となるので、若者が最初に持っていた金額は1050円。


……うーん、これだとなんか芸が無いですね〜(^^;
そんな訳で、もう少し解答を工夫してみました。

持ち金を2倍して1200円払うので、関数f(x) = 2x−1200について考える。
逆関数を g(x) とすると、
g(x) = (x+1200)/2 となる。
求めるのは f(f(f(x))) = 0 なるxだが、これは、

      f(f(f(x))) = 0
         f(f(x))  = g(0)     = 600
            f(x)   = g(600) = 900
               x    = g(900) = 1050

より、1050円 

こっちの方が計算が楽ですね。
f(x)は全単射なので逆関数が存在だとか、逆関数を求めたりする部分も 書いた方が良かったかのかな?
それにしても、この条件だと、持ち金が1200円未満の場合だと自分が 損するのは目に見えているのに、それでも応じてしまった若者が悪いって ところですかね?(^^;



解答・その8

(ペンネ−ム:マサボー)

最初の所持金をA0とし、n回目の所持金をAnとすると、
An+1 = 2An - 1200
An+1-1200 = 2(An-1200)
An-1200 = 2n(A0-1200)
An = 1200 + 2n(A0-1200)
いま、3回目で所持金が0円より
0 = 1200 + 8(A0-1200) ---> A0 = 1050   答え 1050 円

式から明らかなように、儲けるか損をするかは、 最初に1200円より多く持っているか、少ないかによります。
文中に「老人」が 「農夫の財布に中にお金が少ししかない ことを知って」とありますから問題ありませんが、もし「農夫」が1200円以上持って いたら「老人」は大赤字になるところです。




解答・その9

(ペンネ−ム:kiyo)

農夫の最初の所持金 X円。手数料をY円とする。
1回目   2X−Y
2回目   4X−3Y
3回目   8X−7Y
      8X−7Y=0
              Y=1200
              X=1050
                         答え 1050円。

Nを回数とすると、
Y=(2)・X/(2−1)の関係式が成り立つ。
X=1050=2×3×5×5×7
Yが整数となるNは、
N=1 Y=2100   これでは、取引は成立しない。すぐばれる。
N=2 Y=1400
N=3 Y=1200(今回のもの)
N=4 Y=1120
この方が手数料が最も安くていいと思います。



解答・その10

(ペンネ−ム:ch3cooh)

これは詐欺の話ですね。
老人は、農夫の財布にある金額以上を手数料として要求すると 常に得することになりますね?

金額の算出は最終結果から逆方向に追っていくことが可能です。 また、一般項も計算できました。

1)結果の逆算
最終結果:0円
老人に3回目の手数料を払う前:1200
3回目の増額前の金額:600
老人に2回目の手数料を払う前:1800
2回目の増額前の金額:900
老人に1回目の手数料を払う前:2100
1回目の増額前の金額:1050

2)一般項
増額、手数料の支払いを行った後の金額をg(n)とする。
すると、漸化式として
g(n+1)=2・g(n)-1200となる。
g(n)= 2n・f(n)とすると
2n+1f(n+1)=2・2n f(n)-1200
f(n+1)= f(n)-1200/2n+1
上記の差の数式は解くことが可能で…
f(n)-f(0)= -1200・(2n-1)/2n
f(n)= f(0) -1200・(2n-1)/2n
g(n)= 2n・f(n)
= 2n・(f(0) -1200・(2n-1)/2n)
= 2n・f(0)-1200・(2n-1)
= 2n・{f(0)-1200}+1200
となります。
これは、f(0)が1200からどれだけ離れているかを初期値として 離れている値が指数的に増加していることを示しています。
(ふと思ったことは、これは借金地獄:=ローン地獄 の方程式ではないでしょうか)




解答・その11

(ペンネ−ム:Idaho Potato)

直接計算してもできなくはないですが、問題を一般化して、 次の仮定のもとで考えてみましょう。

問題に示された状況を漸化式で表現すると、次のようになります。

an+1 = 2an-b

これを変形すると、

an+1-b = 2(an-b)

となり、(an-b) が公比2の等比数列をなすことがわかります。 すなわち、 一般の自然数nについて、次の式が成り立ちます。

an-b = 2n(a0-b)

ちょうどn回操作後に所持金が0になる(すなわち an=0)とすると、 上の式を a0 について解くことにより、最初の所持金は

a0 = (1-1/2n)b

と表されます。

オリジナルの問題の答えは、n=3, b=1200(円) を代入して、 a0=1050(円) と求められます。

逆に、農夫の最初の所持金が a0 であれば、 指南料を (2n/(2n-1))a0 に設定すれば、 n回の操作で農夫を文無しにできるわけですね。





正解者

かにkiyoch3cooh
青光ゆうじ水の流れ
夜ふかしのつらいおじさんSUDOUマサボー
HASEGAWAIdaho Potatoかつ





まとめ

この問題を解く際に、農夫の最初の所持金をxとして方程式をたてる人と、 最後の0円から時間を逆にたどっていく人と大きく2つの方法に分かれました。 後者のケ−スは青光さんの解答にあるように逆関数の発想ですね。

老人の立場にたつと、最初に契約を交わす段階で農夫の最初の所持金を知る必要があります。 農夫の最初の所持金より多い手数料を設定しなければならないからです。 これはマサボーさん、Idaho Potatoさんの解答に詳しくあります。
また農夫の最初の所持金1050円を1円も残さずきっちり巻き上げるには、 手数料を1120円にした方がいいというのがkiyoの提案です。 しかし手数料を安くすれば、当然魔法を使う回数が増えてしまい、この詐欺行為がばれやすい(?) ということでしょうか。
もっともこれに気づかなかった農夫も?ですよね。
農夫の立場に立てば、 夜ふかしのつらいおじさんのおっしゃるように、最初の所持金より多い手数料を 設定されればされれば、いつか必ず損をするわけです。 1回目に気づかなかったとしても、途中でやめればいいわけで・・・。 (もっとも途中でやめられてしまうと問題が成立しなくなってしまうわけで・・・。 そこは話術のお得意な老人の腕のみせどころ、プロの詐欺師?)
ch3coohさんは、「借金地獄:=ローン地獄 の方程式」とおっしゃっています。 私は株の売買のようだ、と思いました。 株で得をしても、その売買にかかる手数料を取られる、その繰り返し・・・。 危険なにおいを感じながらも、2倍になったうれしさが忘れられずにまた手を出してしまう・・・。 この農夫を満更笑えないところもあるかな?







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