Weekend Mathematicsコロキウム室/NO.135

コロキウム室



NO.1154 2002.2.10.松井 満複素数の問題(2)

+6z+1=0
z=r(cosθ+isinθ)とすると(ここでr>0の実数)

  (rcos5θ+6rcosθ+1)+i(rsin5θ+6rsinθ)=0

ゆえに

  rcos5θ+6rcosθ+1=0、rsin5θ+6rsinθ=0

これらの式から cos5θ、sin5θを消去すると

  r10−36r−1=12cosθ となる。

ここで、−1≦cosθ≦1なので、

  −12r≦r10−36r−1≦12r

となる。従って、

  r10−36r+12r−1≧0 ・・・@
  r10−36r−12r−1≦0 ・・・A

が得られる。

@を因数分解すると、(r+6r−1)(r−6r+1)≧0

+6r−1≧0かつr−6r+1≧0 あるいは
+6r−1≦0かつr−6r+1≦0 となる。


この条件を考え合わせると、r>3/2Bあるいは、rは1/6の近辺Cとなる。
なお両方が負の条件は成立しない。

Aを因数分解すると、

  (r+6r+1)(r−6r−1)≦0

+6r+1>0なので、r−6r−1≦0

f(r)=r−6r−1とすると、f'(r)=5r−6となり、 r=(6/5)1/4で極小となる。
f(5/3)=452/243>0なので、r<5/3D
BCDから1/6の近辺(実際には0.166646<r<0.166687)、3/2<r<5/3となる。E

ここで、z+6z+1=0、の実根を考える。
f(x)=x+6x+1とすると、f'(x)=5x+6>0なので単調増加の関数である。
したがって1個の実根を持つ。
f(-1/6)=-1/65<0、f(0)=1>0なので、根の範囲は-1/6<x<0となる。
他の根をα、β、γ、δとすると|α||β||γ||δ|>6なので
Eからどの根の絶対値も3/2<r<5/3となることがわかる。




NO.1155 2002.2.11.水の流れ三角形の内接円(1)

第92回数学的な応募問題

太郎さんは最近、与えられた問題の逆を考えるようになっています。 ここで問題です。

問1:3辺の長さが3,4,5である三角形の内接円の半径を求めよ。

問2:三角形の内接円の半径が1,かつ三辺の長さが整数である3辺の長さを求めよ。





NO.1156 2002.2.12.水の流れ源氏香(3)

<水の流れ>さんに届いた質問です。第27回の応募問題をみて、 NO.604 源氏香についての方法は 知っておいてください。

「今学校で、源氏香についてやってて、それについて各自考えるって問題が出たんですよ だから一応やったんですけど、最後の問いがわかんなくて調べてたときに

(問)源氏香の組み合わせパターンは52通り。 これは包みを5つ使うからで、包みを増やしたり減らしたりするとパターン数変わる。 包みをn個使うときのパターン数をB通りとしよう。
(1)Bを求めよ。
(2)Bを求めよ。
(3)実はB・・・BまでわかるとそこからBn+1が求めることが出来る! どんな考え方によればいいか。
(4)B〜B10を求めよ。
(5)このBの意味はなにか(由来)

それで僕はこの(5)がわからないんです。 もしわかるならぜひ教えてもらいたいんですが、お願いします。 (はっきり言ってこんな問題を出す人はそうそういませんね)」





NO.1157 2002.2.14.松井 満三角形の内接円(2)

三角形の各辺の長さをa,b,c(a≦b≦c)、内接円の半径をrとすると



となる。ここでa+b=x,b−a=yとすると



となり、r=1なので



となりyはxに対して単調増加関数となる。y≧0なので



xの最小値はa,b,cが三角形であることからc+1なので



ゆえに



c≦8となる
またaの最小値は半径2の円が内接するので3となる。
したがって3≦a≦b≦c≦8の条件に絞られる。
さらにa+b+c=2dとすると
(d−a)(d−b)(d−c)=dとなる。(dは整数)
さらにa+b+c=2dとする。
可能性のあるabcの組み合わせは以下の通りだが、 この式を満足するのは、(a,b,c)=(3,4,5)だけである。

(d-a)(d-b)(d-c)
10
12
12
12
16
15
20
1024
18
16
24
1030
27
1032
1036
1145
1148
1264





NO.1158 2002.2.20.DDT最速降下問題 (9)

最速降下線の途中から重りを離しても、その運動周期は離した位置に無関係なことを示します。



まずNO.1150の結果(2/9修正版)より、運動は上図の曲線上に束縛される1次元運動です。 重りの軌道の束縛曲線である最速降下線を、パラメータuを用いて書けば、

   x=a(u−sin u)
   y=a(1−cos u)     (1)

です。ただしA2/2をaとしました。aは図-1の円の半径です。

まず、最速降下線の1点(x0(u0),y0(u0))から落下する重りが、 同じ曲線上の別の点(x(u),y(u))に達するまでの経過時間を運動方程式を解いて求める方法は、 uに対する運動方程式が複雑で諦めました。 そこで問題を解かずに経過時間のみ求める方法をご紹介します。 この方法は、NO.1150の[3]で適用な置換積分を実行するのと同等です。 どちらもエネルギー保存則をdt/dxについて解いて、xで積分し経過時間を求めます。

重りの運動はuに関する1次元運動とみなせるので、典型的な1次元運動を考えます。 運動を表す座標をx,速度v=dx/dtとするとエネルギー保存則は、

   E=T+U=1/2・mv2+U(x)     (2)

と書けます。ここでmは粒子の質量,TはT=1/2・mv2で運動エネルギー, U=U(x)は保存力を導く力のポテンシャルです。 (2)を運動量pと座標xで書きかえるために、突然ですがラグラジアンなるものを考えます。

    L=T−U=1/2・mv2−U(x)     (3)

がラグラジアンです。L=L(v,x)と考えてLをVで偏微分すると、運動量の表式が得られます。

   ∂L/∂v=mv    (4)

ここで運動量をpとし、p=mvを用いて(2)からvを消去すると、

   E=1/2m・p2+U(x)     (5)

となります。運動量と座標で表されたエネルギーの表式をハミルトニアンと呼び、 ふつうE=H(p,x)で表します。ハミルトニアンからは、運動方程式を導けます。

   ∂H/∂p= dx/dt    (6)
   ∂H/∂x=−dp/dt   (7)

とおくと、通常の運動方程式m・d2x/dt2=−U(x)が得られます。

通常の座標や運動量を用いた場合、これらはトリビアルな結果ですが、 式(1)を用いた時のように任意に変換された座標に対しても、 関係(4),(6),(7)はそのままの形で成り立つので、その場合はトリビアルではありません。

以下の関係は、1次元運動を表す任意の座標qに対して成立します。 運動量pは式(4)から、p=∂L/∂vとして得られるものです。

作用変数Iを不定積分、

   (8)

で定義します。作用変数Iの物理的意味は、一般化角運動量とでも言うべきものですが、 とても説明しきれないので省略します。 I=I(E,q)なのは、エネルギー保存則E=H(p,q)より、p=p(E,q)であるためです。

∂I/∂Eを計算します。積分記号下の微分を利用して、

   (9)

と書けます。またE=H(p(E,q),q)より、



となり、



が成り立ちます。ところが(p,q)に関する式(6)の関係が、



であるために、作用変数IのエネルギーEに関する微分は、

   (10)

であることがわかります。よって式(10)により、運動が開始されてからの経過時間tを計算できます。

この積分を周期運動の1周期に関して行えば、明らか運動の周期が出ます。 しかも作用変数Iの定義(8)を見るばわかるように、 I(E,q)を計算するためには、p=p(E,q)の形がわかれば良いので、 エネルギー保存則の表式E=H(p,q)が必要なだけです。 従って実際にq=q(t)の形を具体的に求めなくても周期を計算でき、 しかも任意の座標で同じ方法が使えます。

今の場合、座標uに関する力学的エネルギーを計算してみると、・ を時間に関する微分として、

   (11)

となります。しかし式(11)にはまだ、計算に関して面倒を起こしそうな超越関数(1−cos u)が 含まれています。三角関数がいくら初等超越関数であろうと超越関数は超越関数です。 もう一度変数変換して、必ず求積可能で、ある程度は代数処理も可能な有理関数への帰着を試みます。

   q=1-cosu   (12)

とおけば、



なので、

   (13)

が得られます。ラグラジアンLは、式(13)の位置エネルギーの符号を変えたものなので、 座標qに対する運動量pは、

   (14)

で定義されます。これを式(13)に代入すれば、



なので、

   (15)

となります。目的は(p,q)に関する作用変数Iの、 エネルギーEに関する微分∂I/∂Eを計算することですが、 位相空間{(p,q)}で運動を表すと、より計算に便利な幾何学的意味を作用変数Iに 与えられます。そのために式(15)をqについて解きます。

   (16)

と変形できるので、運動の軌跡は図-2となります。

ここでエネルギーEは図-1と式(11)から、

   E(u0)=-mga(1-cosu0)   (17)



です。また作用変数Iの定義式(8)の積分∫p・dqは、 図-2のq=2と式(16)の曲線の間に挟まれた面積です。 面積なので、q=2と式(16)のq=q(p)を使って直接pで積分しても同じです。 積分範囲は、図-1からu0≦u≦2π−u0なので、p,qの定義式(12),(14)をたどることにより、 uに関する運動の1周期、
   u=u0 → π → 2π−u0 → π → u0
に対して、
   cos u=cos u0 → -1 → cos u0 → -1 → cos u0
   q=1−cos u =1−cos u0 → 2 → 1−cos u0 → 2 → 1−cos u0
で、qの増減と図-2の曲線の概形(漸近線はq=2)、およびp=2ma2/(2−q)・dq/dtから、
   p=0 → +∞ → −∞ → 0 → +∞ → −∞ → 0
となります。すなわち図-2のq=2とq=q(p)が無限遠でつながった閉曲線と考えて、 状態点(p,q)は、uに関する運動の1周期の間に、閉曲線を2周します。 従ってuの1周期に対応する作用変数は、式(16)が偶関数なのを考慮して、

   (18)

と書けます。ところでいま欲しいのは、式(18)の積分値ではなく、 そのEに関する微分です。不定積分による定義(9)に従い、

   (19)

が得られます。ここで式(19)のT(E)は、運動の周期Tが、 重りの持っている力学的エネルギーEの関数であるかもしれないと言ってます。 力学的エネルギーEは式(17)より、重りの初期位置u0の関数です。 いいかえれば運動の周期TがEに影響されるということは、 重りの初期位置u0に影響されることになります。
式(19)の最右辺の積分はEを含まないので、運動の周期TはエネルギーEに影響されません。 従って最速降下線振り子の等時性が示せました。これが最初の目的です。

最初に述べたようにこの方法は、 NO.1150の[3]の積分を実行するのと本質的に同等ですが、 力学問題という制約条件があるために作用変数を導入すると、 正しい置換のやり方をほぼ自動的に示してくれるのだと思います。



NO.1159 2002.2.20.Akira最速降下問題(10)

最速降下問題について。どの位置から落下させても同じ時間で下に辿り着く、 ということの証明の方法と、証明中の式を細かくしりたいんです…。 大学の授業でやったけど、間の計算や式、細かい証明方法が理解できなくて困ってます。



NO.1160 2002.2.24.yokodon最速降下問題(11)

到達時間に関して

サイクロイド解から、所要時間を求める部分をご説明します。
等時性に関する詳しい説明は、DDT さんが既に丁寧にして下さっているので、省略 致します。
NO.1150の [3] 式に、以下を代入します。

x = A2/2・(u - sin(u)) , y = A2/2・(1 - cos(u))

ところで、

dx/du = A2/2・(1 - cos(u)) , dy/du = A2/2・sin(u)

ですから、



となります(途中は、省略しました)。
よって、[3] 式から、t = T のとき u =u1 であるとすると、



のようになります。

さて、A と u1 は、共に曲線の概形を決めるパラメータ(前者は初期条件のもと で決まる積分定数、後者は境界条件の一つ)でした。一方、T と u1 の関係に関し て見方を変えれば、u を t の関数としてみたとき、u(0) = 0 とすれば、

   (訂正2/25)

となることが分かります。





NO.1161 2002.2.24.本多欣亮マイナスの数(4)

気象の世界(統計、観測)でも、この問題がありまして、-1.5℃の 四捨五入(整数の温度)は-1℃と定義してます。
つまり、ゼロを特殊な点と看做さず、四捨五入する「方向」が一定 と言うことですね。
ちなみに、気象の世界には、2捨3入、7捨8入のデータ処理など も行われていて、43〜47ノットの風を天気図で表す時には45 ノットの記号(矢羽根)を使い、48〜52ノットの風を表す時に は50ノットの記号で代表させています。







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